健康教育のポイント④方法

保健師の日常

健康教育を計画するうえで、対象理解ができたら次は方法を検討します。

方法も目的・目標にあったものであり、対象者の生活にもあっている必要があります。

まず検討するのが、健康教育を計画している保健師自身で行うのか、他の講師を依頼するのかという点です。

それぞれ見ていきましょう。

保健師が行う健康教育

健康教育を計画している保健師自身が、実施する場合のメリットは次のものが挙げられます。

  1. 対象者と顔の見える関係になる
  2. 今後の保健指導でかかわり易くなる
  3. 経費が抑えられる
  4. 目的・目標に沿った内容にし易い

1,2は対象者との関係性が得られるというメリットです。糖尿病予防教室や高血圧予防教室の参加者は、健診結果からリスクの高い人を対象にすることがあります。つまり、健康教育参加者は、今後特定保健指導の対象者になり得る可能性があります。

特定保健指導実施率は26%程度です。(健康保険組合連合会:令和元年度特定健康診査・特定保健指導の実施状況に関する調査から引用)

これは実施した人の割合です。特定保健指導を規定の回数や期間を終了した人となると更に減少します。そして、特定保健指導をきちんと受けて、体重や腹囲、血液データが改善する人はもっと少ないです。

筆者も「忙しいから」「時間がないから」「いつも引っかかるけど体調は悪くないから」「悪くなったら病院に行くから」という理由で特定保健指導を断られたことがあります。

そのため、特定保健指導対象者との関係性作りはとても大切です。健康教育を行う上でそうした対象者との関係性を構築することができるのは、保健師自身が健康教育を行う大きなメリットです。

3の経費が抑えられるという点もメリットの1つです。外部講師を依頼したら、謝礼を支払います。

ネットで「医師 講師 謝礼」と調べると10万円~20万円が相場とも書かれています。他にも薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士、歯科医師などに講師を依頼すればそれなりに費用が掛かります。健康教育を行う保健師自身が、実施する場合にはそういった謝礼はかからないため、費用対効果は上がります。

4の目的・目標に沿った内容にしやすいという点もメリットの1つです。外部講師に依頼すると、健康教育の目的・目標を講師に伝えたり、事前の打ち合わせをしたとしても、実施するのは保健師自身ではないため、「思っていた内容と違った」という結果となる可能性があります。保健師自身で健康教育をする場合は、そうしたデメリットはありません。

では、保健師自身が健康教育を実施する際のデメリットは何でしょうか。

  1. 健康教育の準備に時間がかかる
  2. 薬、病態、食事などの専門性の高い内容は薬剤師、医師、管理栄養士の方が得意

これらが挙げられます。

健康教育を保健師自身で実施する場合は、内容の検討、原稿作成、資料作成、スライド作成、練習といった作業をすべてこなす必要があります。講師に依頼した場合に比べると、準備に時間がかかることは言うまでもありません。

また、とても専門性の高い内容を伝える必要があるときは薬剤師や医師などの専門職への依頼を検討すると良いです。保健師は食事、運動、病態、福祉など様々な分野に精通していますが、1つの分野に特化するのならば、その分野の専門職の方が詳しいでしょう。そのため、より詳しい内容を健康教育に盛り込む場合には、他の専門職へ依頼することも検討しましょう。

保健師以外が行う健康教育

保健師以外が健康教育を行うメリットは次のものが挙げられます。

  1. 準備時間の短縮
  2. 専門性の高い内容を伝えられる
  3. 専門家が伝えることにより説得力が増す

1は前述したように、資料の作成や練習の時間を省くことができるため健康教育の準備をする時間を短縮することができます。

2の専門性の高い内容を伝えられることは外部講師を呼ぶ大きなメリットです。食事についてなら管理栄養士、お薬との付き合い方なら薬剤師、病態や病気そのもののリスクなどは医師といったように、それぞれの専門性に沿った健康教育となります。加えて、質疑応答の際に、より具体的な返答ができることもメリットとなります。

3の説得力が増すこともメリットの1つです。

「そんなに食べると病気になるよ」と家族に言われても、行動変容に至らない人が、病院で医師に言われたら行動変容したという話はよく耳にします。

このように、同じ事柄を伝えるにしても”誰が伝えるか”で伝わり方も変わってきます。もちろん保健師も専門職ですが、食事や薬などに特化した健康教育ならばその分野の専門職の方が説得力が増します。

職場内の専門職が行う健康教育

講師を依頼する場合、職場内の他の専門職に依頼するという方法もあります。

自治体によっては、保健センター内に保健師だけでなく、管理栄養士や歯科衛生士がいるところもあります。そうした職場内の専門職に講師を依頼する場合は、講師料の削減、綿密な打ち合わせができるといったメリットがあります。また、綿密な打ち合わせをすることで、より目的・目標に沿った内容とすることができます。

まとめ

  • 保健師自身が健康教育を行うメリットは対象者との関係性構築、費用対効果の向上、目的・目標に沿った内容となること
  • 外部講師に依頼するメリットは準備時間の短縮、専門性の高い内容の提供、専門職から伝えることによる説得力の増加
  • 職場内の専門職に講師を依頼するメリットは費用対効果の向上、目的・目標に沿った内容とし易いこと

今回は健康教育の方法について、保健師自身が行う健康教育と講師に依頼する場合の健康教育のメリットとデメリットをご紹介しました。

外部講師に依頼する場合の健康教育は、気を付けないと講師に丸投げになってしまいます。専門的な内容は講師に依頼して、健康教育の評価や対象者がどう感じたのかを確認する必要があります。

対象者が十分に理解できていないようであれば、保健師から講師に質問を投げかけたり、健康教育後に対象者へのフォローアップをすることも効果的です。

目的・目標にあっていて、対象者の生活にも合った健康教育の方法を検討してみて下さい。

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