メタボリックシンドロームの保健指導ポイント(初回)

保健師の日常

一般的に保健指導と聞いて、イメージするのは

メタボの方へ「甘いものを控えて下さい」「休肝日を作りましょう」「体重をあと3kg減らしましょう」というものではないでしょうか。

保健師側も「なかなか言うとおりにやってくれない」と思い、メタボの対象者も「またあれやれ、これやれと言われるから行きたくない」と思っている様な、少し嫌なイメージもあるかもしれません。

そんなメタボの方への保健指導ですが、やり方によっては嫌な雰囲気にならずに、参加者が次回も来てくれるような雰囲気にすることができます。

今回は筆者がメタボの方への保健指導をするときに意識していたことをご紹介します。

メタボとは

本題に入る前にメタボについて簡単におさらいしましょう。

メタボとは正確にはメタボリックシンドロームといい、日本語では内臓脂肪症候群です。

定義としては、「内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることにより、心臓病や脳卒中などになりやすい病態」です(e-ヘルスネット)。

メタボを放置しておくと重度高血圧や糖尿病、脂質異常症の発症リスクが高まり、心筋梗塞などの生命にかかわる病気の発症リスクを高めてしまいます。

そのため、40歳以上の日本人は年に1回、特定健康診査で生活習慣病が無いかチェックします。

そこで、体重、腹囲、血圧、血糖値、脂質などのリスクの高い人、つまりメタボリックシンドロームの人に保健指導をします。これを特定保健指導と言います。

メタボの判定基準

①腹囲・BMI

  1. 腹囲が男性なら85㎝以上、女性なら90㎝以上
  2. BMIが25以上

1、2のどちらかに該当すれば②に進みます。1、2のどちらにも該当しない場合は、特定保健指導の対象にはなりません。

②血圧・血糖値・脂質

  1. 空腹時血糖値110㎎/dl以上
  2. 中性脂肪150㎎/dl以上またはHDLコレステロール40㎎/dl未満
  3. 収縮期血圧130mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上

①に加え1、2、3の内1つ該当すると動機づけ支援になります。2つ以上該当すると積極的支援になります。

①に加え喫煙歴がある場合は②は関係なく積極的支援になります。

動機づけ支援なら初回面接と6か月後の評価をします。積極的支援なら初回面接、3か月以上の継続的支援、6か月後の評価をします。

聞く

筆者がメタボの方へ保健指導をするときに意識している点は、聞くことです。

保健指導というネーミングから、「情報提供」や「対象者が知らないことを教える」という風にとらえがちです。これは保健師という専門家が、専門知識のない一般の方へ指導するという形になり、教える側、教わる側に分かれてしまいます。教わる側のモチベーションがとても高い場合は、これでも効果があり、嫌な雰囲気にもならないかもしれません。

しかし、特定保健指導対象者の多くはモチベーションが高くありません。「保健センターから呼ばれたから来た」「行きたくはないけど、手紙が届いたから来た」という方が多いです。企業であれば「保健指導を受けに行かないと庶務課から催促される」というところもあるでしょう。

そのようなモチベーションの対象者に生活習慣改善の方法をいくら説明しても実行に移すのは難しく、継続することは更に困難でしょう。

そこで、必要なのは聞く力です。特に、初回面接は聞くことが大切です。

対象者の食生活や運動習慣だけでなく、家族構成や仕事、趣味などなんでも良いので聞くことが大切です。

「聞く」と言っても質問攻めにしてはいけません。自分自身が特定保健指導の対象者だとしても、初対面の相手に質問攻めにされて良い気分ではありませんよね。

筆者はこんな感じで話を聞いていきます。

保健師
「○○さん、こんにちは。保健師の筆者と言います。今日は来ていただいてありがとうございます」

対象者A
「お願いします」

保健師
「最近寒くなってきましたね。うちはもうこたつを出してしまいました。Aさんのとこはまだですか」

対象者A
「うちはまだですね。筆者さん、こたつを出すのは早くないですか」

保健師
「寒いのは苦手で。さて、今日はAさんが10月に受けた健康診断の結果を一緒にみていこうと思います。これが結果の表です。気になるところはありますか。」

対象者A
「ああ、血圧がちょっと高いですよね。年々上がってる気がします。」

保健師
「そうですね。確かに毎年少しずつ血圧が上がっていますね。血圧の上がり具合が少し気になっている感じですかね。」

対象者A
「あとは、コレステロールが高いですかね。父親もコレステロール高かったからこれは、遺伝かなって思ってます。」

保健師
「お父様もコレステロールが高かったんですね」

対象者A
「父親はコレステロールが高かったですし、体重もそれなりでしたね。それでも大きな病気もしなかったので、私も大丈夫なのかなって思ってます」


こんな感じです。対象者の話を深堀する形で聞いていきます。特に対象者Aの場合、自分から血圧とコレステロールが高いことについて話していますね。何故気になっているのか、いつから気になっているのかなどについて聞いていくことができます。

気になっている理由を対象者自身が話すことで、自分で生活習慣改善への意識づけをすることができます。

対象者の話を聞くことで、生活習慣への意識づけ、情報収集、対象者との関係性構築をしていく事ができます。

ハードルの低い目標から始める

特定保健指導では、対象者自身の目標を決める必要があります。これは、特定保健指導のルールとなっているので、初回面接で決めることになります。

しかし、モチベーションの低い対象者が高い目標を決めてしまうと、継続することは難しいですし、達成できなかった時には失敗体験となります。失敗体験が重なれば次第に取り組む意欲も失われてしまいます。

筆者が体重や腹囲の目標を決めるときの目安にしているのは、体重の3%です。

体重が3%減少すると血圧、脂質、血糖値といった数値の改善がみられるという研究があり、それを参考にしています。体重70kgの方であれば、2.1kgの減少を目指すことになります。

他には、10年間で体重が徐々に増加したという人には、「何歳ころの体型を目指しましょうか」と聞いたりします。

取り組み目標についても過去にダイエット等の経験のある方は、その方法を聞き、過去の方法よりも少しハードルを下げた取り組み目標を立てます。

このようにして、低いハードルの目標を立て、継続することを重要視します。

まとめ

  • 初回の保健指導は聞くことが大切
  • まずは低いハードルの目標を立てる

今回は、メタボの方への保健指導のポイントを2つご紹介しました。特に初回面接では聞くことが重要になってきます。最初はなんて聞いたら良いか分からなかったり、一方的に説明してしまうこともあると思います。

そんなときは、友人との会話をイメージしてみると良いです。面白そうなことには「それでそれで」「どうなったの」「ええ、すごいねえ」と聞くのではないでしょうか。

保健指導も同じで、対象者の話に関心を持って聞くことが大切です。保健師が対象者に関心を持っていると、対象者も話したくなります。

特に初回の保健指導では、「対象者に関心を持つ」という保健師のモチベーションが大切になります。

今回の記事が保健指導の参考になれば嬉しいです。

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