健康教育の例(認知症の基本)

保健師の日常
保健師
保健師

今度、老人クラブで認知症の健康教育をすることになったんだけど…

正直、認知症ってよくわかんないんだよね。

筆者
筆者

認知症って言葉はみんな知っているけど、その分、健康教育をするってなると難しいですよね。

そこで、今日は認知症の基本的なところをご紹介します!

この記事で分かること
・認知症とは
・認知症の種類
・認知症の相談窓口

・認知症の健康教育

認知症とは

認知症とは
「一度正常に達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続性に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態」です。(WHO)

ICD-10(国際疾病分類)では、
「通常、慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、言語、判断等通の高次機能の障害からなる症候群」と定義されています。

イメージとしては、
「認知症は脳の疾患であり、認知機能等が低下することで生活に支障が出る状態」といった感じです。

住民向けに説明する際には、
「認知症は脳の病気です。記憶力や判断力などが低下して、日常生活に支障が出るような状態です。」
といった感じだと伝わりやすいです。

認知症の種類

認知症はその病態や原因別に種類があります。数ある認知症の種類の中でも、大きな割合を占める4つのことを4大認知症と言います。

4大認知症は、大きな割合を占める順に
アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症
です。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は認知症全体の67.6%を占めており、最も多いタイプの認知症です。

特徴的な症状は記憶障害です。特に最近の出来事を忘れやすく、過去の記憶ほど保持される傾向にあります。他にも見当識障害、実行機能障害などが生じ、時間が分からなくなったり、料理などの段取りが必要な作業が難しくなることがあります。

病態としては脳にアミロイドβというタンパク質が蓄積することが原因と言われています。アミロイドβが神経細胞を破壊して、脳が萎縮していきます。

発症から10年ほどで死に至ると言われており、発症から徐々に症状が進行します。
初期には記憶障害等の症状がみられ、末期になると会話すること自体が難しくなり、食事や排泄などの日常生活に介助が必要となります。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は認知症全体の19.5%を占めており、2番目に多いタイプの認知症です。

症状としては記憶障害や実行機能障害等が現れます。特徴的なのは、突然症状が現れたり、急に症状が悪化することです。また、できることと、できないことの差が大きく、まだら認知と呼ばれる特徴があります。

脳血管性認知症の原因は、脳梗塞や脳出血です。これらにより、脳の一部分に血流が通らなくなることで認知機能の障害が現れます。また、脳梗塞や脳出血が起きる部位によって、現れる症状が異なります。

発症後の生存期間は男性が5.1年、女性が6.7年と言われています。脳梗塞や脳出血が再発するたびに進行していきます。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は認知症全体の4.3%を占めており、3番目に多いタイプの認知症です。

特徴的な症状は幻視やパーキンソン症状です。

幻視では「庭に子どもがいる」「壁に虫が這ってる」といったものが見えることがあります。パーキンソン症状としては、身体が動きにくくなったり、手の震え、歩いているときに急に止まれないといったものが挙げられます。

レビー小体型認知症の原因は、レビー小体と言われるタンパク質が、脳の大脳皮質に生じることです。

レビー小体型認知症の生存期間は発症後3~4年と言われています。初期には軽度の記憶障害が生じ、進行すると注意障害や遂行機能障害などが現れます。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は認知症全体の1.0%を占めており、4番目に多いタイプの認知症です。

特徴的な症状は、社会性の欠如や感情のコントロールが難しくなることです。
スーパーマーケットで万引きをしてしまったり、今まで暴力を振るわなかった人が暴力をふるってしまうなどです。また、相手に言われた言葉をオウム返ししたり、いつも同じ言葉を言い続けるといった症状も特徴的です。

前頭側頭型認知症の原因は、前頭葉や側頭葉前方の萎縮と言われています。前頭葉は人格や社会性を司る部分で、側頭葉は記憶や言語を司る部分です。そのため、前述したような症状が現れます。

前頭側頭型認知症の生存期間は、発症してから平均6~9年と言われています。初期には、人格の変化などが見られ、進行していくと無気力・無関心になっていきます。

物忘れと認知症の違い

筆者
筆者

ここは健康教育のポイントです。

人間は加齢によって、物忘れを生じます。しかし、これは認知症による記憶障害とは異なります。

その違いは、
「エピソードの一部を忘れるか、エピソードそのものを忘れるか」です。

加齢による物忘れはエピソードの一部を忘れます。「今日の朝ご飯に何を食べたか思い出せない」という状態です。一方で、認知症による記憶障害はエピソードそのものを忘れます。「今日、朝ご飯を食べたこと自体思い出せない」という状態です。そのため、再び朝食の準備を始めてしまうといった行動が生じます。

余談
「最近、忘れ物を取りに行くことが多いんだけど、これって認知症なのかね」
これは、筆者が認知症の健康教育をした際に参加者から聞かれた質問です。この質問から、加齢に寄る「物忘れ」と認知症による「記憶障害」の違いは、住民が気になることの一つなのだと感じました。
ちなみに、この時の筆者は次のように回答しました。
「私は医師ではないので認知症かどうかを診断することはできません。しかし、忘れ物をしたことを思い出して取りに行く行動ができているということですね。今、忘れ物で日常生活に支障が出ていないようでしたら、次にかかりつけ医を受診した際に、忘れ物や認知症についてご相談いただくのがよいかもしれません。」

認知症の相談窓口

筆者
筆者

ここも健康教育のポイントの1つです。

認知症の相談窓口は地域包括支援センターかかりつけ医の2つです。

地域包括支援センター

地域包括支援センターは、地域の高齢者の相談窓口です。

ケアマネジャー、社会福祉士、保健師が配置されており、介護・医療・保健・福祉の分野で、専門的知見のもと相談に応じます。

対応している相談内容には、認知症についても含まれます。「家族が認知症かもしれないけれど、どうしたらよいのか」「認知症の家族の介護が大変。何かサービスは使えないか」など、基本的に何でも相談にのってくれます。

地域包括支援センターは市町村が設置しているため、基本的にどの自治体にもあります。概ね、中学校区に1か所を目安に設けられています。

かかりつけ医

かかりつけ医に認知症の相談をするのも良いです。かかりつけ医が必ずしも認知症の専門医であるとは限りませんが、認知症の基本的な検査はしてくれます。そして、かかりつけ医で専門医による診察が必要と判断された場合には、専門医へ紹介してくれます。

また、医療機関は地域包括支援センターや行政とも必要に応じて連携をしているため、介護サービスの調整が必要な場合には、ケアマネジャーや地域包括支援センター等へつないでくれます。

認知症の健康教育

ここまで、認知症の基本的なところをご紹介してきました。

これらの知識をベースとして、認知症の健康教育を少し考えてみましょう。

目的

認知症の健康教育をするうえで、まず、決めなければならないのが目的です。
例えば次のようなものです。

  • 認知症の予防行動がとれる
  • 家族が認知症かもしれないと思ったとき適切に対応できる
  • 認知症の家族への適切なかかわり方ができる など

目的によって、目標や全体の流れを決めていきます。

もし、地域の老人クラブや介護予防団体から「認知症について教えてほしい」と依頼があった際には、最終的な落としどころは「家族や周りの人が認知症かもしれないと思ったときに適切に対応できる」にすると、全体の構成が作りやすいと思います。

アイスブレイク

認知症の健康教育は、一方的な知識の提供になってしまいがちです。人の集中力は20分が限界とも言われているため、30分や60分の健康教育を丸々講義形式にするのは、適切ではありません。

そこで、アイスブレイクを導入することで集中力をリセットします。
※アイスブレイク:場の雰囲気を和ませたり、緊張感をほぐすこと

認知症予防の方法としてコグニサイズという体操があります。
これは、頭を使いながら体を動かすというもので、アイスブレイクには適しています。コグニサイズは、高齢者に限らず若年者でも初見では難しさがあるものが多いです。参加者同士が「あれ、難しいな」「うまくできんな」と、悩みながら行い、講義以外のことに集中するとことでその後の保健師の話への集中力も高まります。

アイスブレイクと認知症の予防方法の紹介という2つの目的でコグニサイズはおすすめです。

まとめ

・認知症は脳の病気で、記憶力や判断力が低下して、日常生活に支障をきたす状態
・4大認知症は多い順に、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症
・加齢による物忘れはエピソードの一部を忘れるが、認知症の記憶障害はエピソードそのものを忘れる
・認知症の相談窓口は地域包括支援センターかかかりつけ医
・認知症の健康教育ではアイスブレイクとしてコグニサイズがおすすめ

今回は、健康教育を行う上での認知症の基本的な部分をご紹介しました。まずは、これらを頭に入れて健康教育の流れを考えていくと、スムーズに準備が進むと思います。

一方で、認知症の健康教育は、
専門的な内容過ぎて参加者がついてこれなかったり、講義形式で進めたがゆえに参加者の集中力が続かなかったりと、ハードルが高い部分があります。

そこで、本サイトでは認知症の健康教育の原稿を紹介しています。

認知症の健康教育のイメージが付かない方や健康教育の準備を手早く済ませたい方は、ぜひ、チェックしてみてください!

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