人には「興味」というものがあります。
この記事を読んでいるあなたは、健康教育や保健師に興味があるのではないでしょうか。
また、飲食店で働いている人は料理に、アパレル業界の人はファッションに興味があるでしょう。
飲食店と言っても、イタリアンレストランで働いている人はパスタやピザに、寿司職人はネタの鮮度やシャリの硬さが気になります。
もっと細かく言えば、イタリアンレストランの厨房スタッフは料理自体に、ウェイターは料理の提供の仕方やお客様との話し方に興味があります。
このように人によって興味のある事柄は異なります。
健康教育で対象理解をするうえで、「対象者は何に興味があるのか」を理解すると、対象者が興味をもって参加することができます。
対象者の興味を考えるうえで、職業について考察してみましょう。
今回は事務職についてです。
事務職の悩み
事務仕事ならば1日の多くの時間を座って過ごします。そうすると足のむくみや、肩凝り、腰痛の悩みを抱える人は多くいます。また、パソコンやタブレットなどのVDT(Visual Display Terminals)の影響で体の症状だけでなく精神的な疲労を感じている人もいます。
一方で、運動不足を感じジョギングやサイクリングを始める人、ジムに通うといった行動を起こしている人もいます。
事務職の1日
事務職の1日のスケジュールを想像してみましょう。
- 6時30分起床
- 身支度をして7時30分に出発
- 通勤途中のコンビニで昼食を買って出社
- 午前中に会議、プレゼン資料の作成、電話対応をして12時から昼休憩
- 13時から眠気と闘いながら企画書の立案
- 1日の業務報告書を作成し17時30分退社
- 30分電車に揺られて18時頃に帰宅
例えばこんな感じです。対象者の生活がイメージできると健康教育の内容も、対象者に合ったものになります。
電車通勤がほとんどの対象者に、「車ではなく公共交通機関を使った方が運動量が増えますよ」と言っても意味はありませんし、コンビニ弁当をよく食べる対象者に、「バランスのとれた外食の選び方」を伝えても効果がありません。
事務職の食事
事務職の食事はどんなものでしょうか。
健康教育を行う皆さんの周りには、ヘルスリテラシーの高い人が多いと思います。保健師、管理栄養士、看護師、医師、またそれらを目指す学生です。
しかし、一般企業に勤める事務職のヘルスリテラシーは、あなたの周りよりも高くはない可能性があります。
筆者が保健師をしていたころの、他部署の一般事務職の方の中にはこんな方がいました。
- 朝はお腹が空いてないから食べない
- ランニングを定期的にしているから、昼はコンビニ弁当+カップラーメンを食べる
- 毎日職場でお菓子をもらったりあげたりして食べる
事務職の方々の食事は炭水化物に偏っていたり、量が多かったり、間食が多かったりするかもしれません。健康教育をする前に、対象者がどんな食事をとっているのか情報収集できると良いです。
事務職の体重
前述したように事務職の多くはデスクワークがメインです。つまり座位時間が長く、運動量は少ないです。
「新卒で就職してから運動量は減ったけど食事量は減らないから体重が増えてしまった」という話はよく耳にします。若手の社員では運動量の減少により体重増加が気になっているという人がいます。
また、中高年の社員になってくると基礎代謝量が減少してきます。20代と50代では約200kcal/日の基礎代謝量が違うというデータもあります。(e-ヘルスネット,加齢とエネルギー代謝参照)
基礎代謝量が減ったからと言って、食生活が変わるわけではありません。そのため、中高年から体重増加が気になるという人もいます。
事務職の興味
ここまで、事務職を幾つかの角度から見てみました。
では、事務職の方は何に興味があるのでしょうか。
身体的な悩みにフォーカスするなら眼精疲労、肩凝り、腰痛、体重増加などが挙げられます。保健師が事務職に対してい健康教育を行う場合には、肩回りのストレッチを入れることで、興味をもって健康教育に参加してくれるかもしれません。
精神的な悩みにフォーカスするならPC作業による精神的な疲労感、職場の人間関係などが挙げられます。他人とのコミュニケーションの取り方について紹介すると、「明日から使えるかも」と思って聞いてもらえるかもしれません。職場のメンタルヘルスは社会問題の1つになっています。自分の気持ちを相手に伝えること、相手の気持ちを理解することなどにも興味を持たれるかもしれませんね。
事務職とひとくくりにはできないことも…
今回は事務職の対象理解についてご紹介しました。
しかしながら、事務職とひとくくりにして、先入観をもつのはよくありません。
事務職といっても、経理部、営業部、企画部、開発部、総務部などで部署も違えば仕事内容も違います。対象者の所属する会社が自動車メーカーなのか、金融機関なのか、公務員なのかでも異なります。
対象理解の最後には、その対象集団の個別性を考慮する必要があります。
まとめ
- 対象者の興味を理解する
- 事務職はVDT症候群や運動不足、体重の変化に悩むことがある
- 対象理解の最後には、対象集団の個別性を考慮する
今回は、事務職の対象理解のヒントをご紹介しました。
成人を対象に健康教育をする場合は、対象者の職業が事務職であることは多いと思います。そういうときの参考になれば嬉しく思います。
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