健康教育を準備で、方法まで決まったら次は会場確保・日程調整、周知です。
これは、保健師の専門性というよりも事務的な物ですので、さらっとご紹介します。周知方法によっては参加者がたくさん集まったり、逆に全然集まらなかったりしますので、十分な検討が必要です。
会場
会場を選ぶうえで筆者が考慮する点は次の3つです。
- アクセスし易いか
- 広さは十分か
- 資材等の準備は可能か
まず、アクセスし易いかです。市町村で健康教育を行う場合、ある地区の住民を対象に行う際には、地区の公民館や体育館がアクセスし易いでしょう。
一方で、糖尿病予防教室や高血圧予防教室の場合は、対象者は健診結果から抽出します。そのため、対象者の住む地区はバラバラです。その場合は、対象者が電車やバスで来場するのか、それとも自家用車で来場するのかも考える必要があります。電車やバスがメインであれば駅やバス停の近くの会場を、自家用車が多いと思われる場合は、駐車場のある施設を選ぶと良いでしょう。
都市部と地方でも異なる点があります。都市部では会場は公営のものでも、民営のものでも幾らかの使用料を支払うことが多いですが、地方で公民館などを使用する場合には、使用料がかからないこともあります。
2の広さも重要です。新型コロナウイルス感染症の影響で、一部の施設では収容人数に制限を設けているところがあります。施設に収容可能な人数も事前の確認が必要です。
3の資材についてです。健康教育の方法によってはパソコンやプロジェクター、スクリーンを使用します。会場に備え付けの物があれば借りられますが、そうでない場合は保健センターや市役所等から会場まで運び、セッティングすることになります。当日の講師の資料、アンケート、パンフレットにそうした資材など持ち物が増える可能性もあります。また、公民館など小さな会場で健康教育を実施する場合は、そもそもスクリーンを広げる場所がないことも考えられます。
こうした点を踏まえて会場を選んでみて下さい。
日程
日程は早めに検討し、講師に依頼する場合は調整をしておくと良いです。
これは健康教育の方法にもかかわる部分ですが、全何回コースの健康教育をするかも考えます。
例えば高血圧予防教室の場合、
- 食事内容に絞って全3回の調理実習コースで行う
- 食事、栄養、病態の3回コースで行う
- 食事・病態を1回で行い、同じ内容で別の対象者に2回行う
このように内容が同じでも、回数や対象者は変えられます。
また、外部講師に依頼する場合は、講師との日程調整が必要になります。場合によっては、その時期は都合が合わないという可能性もあるので、早めの日程調整が大切です。
周知
周知方法はとても重要です。
周知方法によっては、来てほしい対象者に参加してもらえませんし、予約が殺到してキャパオーバーになる可能性もあります。
周知方法としては、広報誌への掲載、チラシの各戸配布、商店等へのポスターの掲示、SNSでの発信、対象者への個別通知、自治体のホームページへの掲載などがあります。自治体によっては広報無線での周知もできます。
広報誌への掲載やチラシの各戸配布は、民間企業でやろうとすると広告料や印刷代で多額の費用がかかりますが、行政が行う場合には、民間よりも安価にできることが多いです。一方で、そうした行政からのお知らせは、見ない人は全く見ません。筆者の周りでは、高齢者は広報誌や行政からのチラシに目を通す方が多くいましたが、働く世代はあまり広報誌を見ない印象でした。
商店等へのポスターの掲示は、「このお店に来るような人に参加してほしい」場合や、「とりあえずたくさんの人に知ってほしい」という場合には有効です。金融機関などにも協力が得られるならば、手続きの待ち時間に目に入るところに掲示してもらうのも良いでしょう。ただ、ポスターを掲示してもらえる場所というのは、他のポスターも多く掲示してあります。数多あるポスターの中でも目に留まるようなデザインの工夫も必要です。
対象者への個別通知は、ハイリスクアプローチでよく用いられます。封筒にチラシを入れるのかハガキを使うかでも見られ方は違います。圧着ハガキは「とりあえず開いてみる」という行動を起こしやすいので、筆者的にはお勧めです。個別通知のデメリットとしては、通知する人数によって時間がかかるという点です。対象者の抽出、チラシの作成、案内文の作成、封筒の作成などです。こうした業務は業者に委託して、時短することもできます。
中核市や政令指定都市などの大きな自治体ではSNSを活用した健康教育の周知も行われているようです。働く世代や中高生、大学生などを対象とした健康教育では特に活用できそうですね。
まとめ
- 会場確保はアクセス、広さ、資材準備を考慮する
- 日程調整は早めに行う
- 周知方法は、参加してほしい対象者に届く方法を検討する
今回は健康教育の会場確保、日程調整、周知方法についてご紹介しました。これらは、保健師の専門性というよりも事務的な側面が強いです。
周知方法については奥が深いです。筆者は健康教育を企画したもののなかなか参加者が増えなくて困ったことがありました。その際に、ソーシャルマーケティングやナッジ理論の本を読んで勉強しました。
健康教育の周知方法には、保健師の専門書よりも経営や経済、マーケティングの本が参考になります。
また、どこかの機会でお勧めの書籍についてもご紹介します。
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