高齢者への健康教育の例をご紹介します。
保健師学生さん、新任保健師んさんの参考になれば嬉しいです。
設定
- テーマ 熱中症予防
- 時間 30分
- 場所 地域の高齢者サロン
- 会場 公民館
- 参加者は畳に座布団で受講
- ホワイトボードあり
- 健康教育の実施者 保健師1名
- 媒体 模造紙
対象者
- 地域の高齢者
- 対象者の年齢 70歳代~80歳代
- 男性5名、女性15名
- ADL自立
- 難聴者はいないが年齢相応の聞こえにくさのある参加者あり
原稿
導入
皆さん、こんにちは。保健センターの筆者と言います。今日はこうして皆さんにお話しできる機会をいただきありがとうございます。よろしくお願いします。
動機づけ
今日は熱中症予防というテーマをいただいています。皆さん、熱中症ってどんなイメージがありますか。
※参加者2名に質問する。
参加者A「イメージねえ。熱中症なるといかんから水分はとるようにしてるよ」
参加者B「よくテレビで熱中症で救急搬送されたってニュースを見るから、恐いなって思います」
ありがとうございます。今、お話いただいたように水分摂取は熱中症予防の基本で、とても大切なことです。そして、毎年7月、8月くらいになると熱中症で救急搬送されたというニュースがよく報道されますよね。実際に去年は全国で71,029人(令和4年度5月~9月:総務省消防庁)もの人が救急搬送されています。驚くべきことに、その中の半分以上が65歳以上の方だそうです。
ここで問題です。3択問題ですよ。そんなに多くの方はどこで熱中症になるのでしょうか。①外出先(屋外)②道路③自宅。皆さん、よく考えて下さい。いきますよ。①の外出先(屋外)だと思う人は手を挙げて下さい。はい、ありがとうございます。では、②の道路で熱中症になると思う方は手を挙げて下さい。はい、ありがとうございます。③の自宅で熱中症になると思う方は手を挙げて下さい。はい、ありがとうございます。皆さん、回答がばらけましたね。
答えは③の自宅です。正確には住居ですね。つまり、家にいて熱中症になってしまう方が1番多いんです。去年は熱中症になった人の約4割が家にいました。
結構意外ではないでしょうか。「なんで家にいて熱中症なるのか」と疑問に思うかもしれません。
それは、温度と湿度、そして風が原因です。
熱中症というと「屋外の直射日光にさらされた状態で水分をとらずに作業をしているときに発症する」というイメージはありませんか。確かに、こうした状況での作業をするときには熱中症になり易いですが、1つ注意しなければいけない点があります。それは、直射日光がなくとも熱中症になるということです。
熱中症に影響するのは、日光、湿度、温度、風の4つです。
屋外での作業は風があるものの日光、湿度、温度の影響はあるため、熱中症になり易いです。
では、少し話が戻って、「なぜ、家の中で熱中症になるのか」です。
家の中は直射日光は無いものの、湿度、温度、風の影響を受けます。特に屋外よりも風が通りにくいというのもポイントです。そのため、「家の中だからちょっと暑いけど大丈夫でしょ」という風にはならないのです。
先ほど、熱中症で救急搬送される方の半分以上が65歳以上だとお伝えしました。これにも、わけがあります。
人間は加齢とともに体の水分量が減り、暑さも感じにくくなります。体の水分量が減れば汗をかきにくくなり、体温も上がりやすいです。また、暑さを感じにくいため、体にとっては暑すぎる部屋にいても、それに気づきません。急にめまいや吐き気がして急いで病院に行ったらお医者さんから熱中症ですねと言われることになってしまいます。つまり、年配の方、特に65歳以上の方は熱中症に注意が必要なのです。
ここまでを、いったんまとめます。
ポイントは2つです。
- 家の中でも熱中症になる
- 65歳以上の方は特に熱中症になり易い
ここまでで、何か質問のある方はいらっしゃいますか。
では、質問も出ないようですので、次にいきますね。話の途中でもいつでも質問や意見を受け付けてますので、気軽に話しかけて下さい。
熱中症予防方法
ここからが、お待ちかねの熱中症の予防方法です。
皆さんは、熱中症予防で意識していることはなんですか。
※2人ほどに質問する。
参加者C「さっきの人も言ってたけど、やっぱり水分補給かな」
参加者D「家ではなるだけ扇風機のそばにいるようにしてるよ」
はい、ありがとうございます。水分補給と扇風機、どちらも熱中症予防には大切なものです。
今から熱中症の予防方法について3つご紹介します。
1つ目は、参加者Aさん、参加者Cさんがおっしゃったように水分補給です。皆さん、人間は1日にどのくらい水分が必要だと思いますか。では、また3択問題です。①500ml、②1000ml、③1500mlです。では①の500mlだと思う方は手を挙げて下さい。はい、ありがとうございます。では②の1000mlだと思う方は手を挙げて下さい。はい、ありがとうございます。③の1500mlくらいの水分が必要だと思う方は手を挙げて下さい。はい、ありがとうございます。
答えは③の1500mlです。お食事でとる以外の水分で1日に1500ml程度が必要と言われています。特に夏場は汗をかいて、体から出ていく水分も増えるため、このくらい摂取はしたいところです。
「ええ、そんなに飲めないよ」と思われた方もいるでしょう。確かに、一気に1500ml飲むのは私でも大変です。なので、こまめに水分をとるようにしましょう。ここが、今日のポイントですよ。こまめに水分をとることが大切です。
「のどが渇く前に飲む」というのが一つの目安になります。
例えば、こんなタイミングで水分摂取をするのはいかがでしょうか。皆さん、自分の1日の生活をイメージしてみて下さい。
- 朝起きて1杯水を飲む
- 朝食の時に1杯
- 10時頃に1杯
- 昼食で1杯
- 15時のおやつで1杯
- 夕食で1杯
- お風呂に入る前に1杯
- お風呂から出た後に1杯
- 寝る前に1杯
これだけで、大体1500mlはとったことになります。これなら、何となくできる気がしてきませんか。この中でも、特に水分摂取をしていただきたいのが、入浴前後と寝る前です。入浴中には800mlほどの汗が出るというデータもあります。また、睡眠中にも350mlほどの汗が出ると言われています。実際に睡眠中に熱中症になる方も少なくありません。
「寝る前に水分をとると、夜トイレに行きたくなってしまう」という方は、朝起きてから水分をとるようと良いです。
熱中症の予防方法の2つ目は、エアコンです。
先ほどお話ししたように、家の中で熱中症になる方が多くいます。当然のことではありますが、エアコンで部屋の温度を適切に保つことは熱中症予防になります。
「エアコンの冷たい風は苦手」という方は、テレビやテーブルの位置を調整することで風が直接当たらずに過ごすことができます。家にエアコンが無いという方は、先ほど参加者Dさんがおっしゃったように扇風機を活用しましょう。部屋の窓とドアを開け、風が1方向に抜けるようにすると熱がこもらずに過ごすことができます。
熱中症予防の3つ目です。それは、適宜マスクを外すことです。新型コロナウイルスの影響で今はマスクをして外出するのが当たり前になっています。2,3年前なら考えられないことでしたよね。このマスクによって、顔の周りに熱がこもってしまいます。国も屋内でも2m以上距離を空けることができて、ほとんど会話をしない場合はマスクをしなくて良いといっています。外ならば2m以上距離があれば会話は関係なくマスクをしなくてよいとのことです。
適宜マスクを外して、顔の周りに熱がこもらないようにするのも熱中症予防になります。
ここまで、熱中症の予防方法についてご紹介しました。何か質問は、ありますか。
はい、ありがとうございます。では、今日の振り返りをします。
まとめ
今日のポイントは次の3つです。
- 部屋の中でも熱中症になる
- 熱中症の予防にはこまめに水分をとる。特に入浴前後と寝る前には水分補給。
- エアコンで部屋の温度を調節する
いやー、皆さんが温かい雰囲気で話を聞いていただいているので、私も緊張せずに話すことができました。今、20分くらい話したので、一度私も水分補給をさせて下さい。皆さんもよろしければ、水分補給をどうぞ。
では、これで、熱中症の話を終わります。ありがとうございました。
補足
高齢者を対象とした健康教育で、熱中症予防というテーマで例を挙げてみました。
これで30分くらいです。次の記事で解説をしますので、良ければそちらもご覧ください。
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