①の解説記事です。まだ、①を見ていない方はそちらからご覧ください。
導入
原稿
皆さん、こんにちは。保健センターの筆者と言います。今日はこうして皆さんにお話しできる機会をいただきありがとうございます。よろしくお願いします。
解説
まず最初に、挨拶、自己紹介、参加者への感謝などを伝えます。
保健師学生なら
「皆さん、こんにちは。○○大学の学生の××です。今日はよろしくお願いします。大分緊張していますが、今日まで頑張って準備してきたので是非楽しんでいってください。」
こののような形でも良いでしょう。
ポイントは明るく、元気よくです。媒体の準備や原稿の修正で寝不足の状態で健康教育を行う際は特に、声のトーンを高めにして、話すと明るさを感じます。最近ではマスクをして健康教育を行うことが多いと思います。保健師自身の表情が見えにくいため、声のトーンで参加者へ伝わる印象も大分変ります。少し意識してみて下さい。
どうしても、大きな声を出すことが苦手という方はマイクを使うのも一つの手です。その場合、会場にマイクがあるのか、マイクを持っていく事はできるのかなどの事前確認が必要になります。
その後に、「熱中症ってどんなイメージがありますか」「熱中症予防に何をしていますか」「毎年何人くらいの人が熱中症になっていると思いますか」といったような質問をして、参加者に考える機会を提供します。
健康教育がプレゼンテーションと違うのは、参加者と発表者で相互のやり取りがあることです。特に、参加者の行動変容を促すためには、「明日からどういう行動をとろうか」と考える必要があります。導入の時に熱中症について考えると、その後に話す内容も「自分の生活に当てはめるとどうだろうか」という風に考えやすくなります。
動機づけ
原稿
今日は熱中症予防というテーマをいただいています。皆さん、熱中症ってどんなイメージがありますか。
※参加者2名に質問する。
参加者A「イメージねえ。熱中症なるといかんから水分はとるようにしてるよ」
参加者B「よくテレビで熱中症で救急搬送されたってニュースを見るから、恐いなって思います」
ありがとうございます。今、お話いただいたように水分摂取は熱中症予防の基本で、とても大切なことです。そして、毎年7月、8月くらいになると熱中症で救急搬送されたというニュースがよく報道されますよね。実際に去年は全国で71,029人(令和4年度5月~9月:総務省消防庁)もの人が救急搬送されています。驚くべきことに、その中の半分以上が65歳以上の方だそうです。
解説
前述したように、参加者に考える機会を提供することで、内容が頭に入りやすくなります。ポイントは、参加者にオープンクエスチョンで投げかけることです。クローズドクエスチョンだと、返答は「はい」「いいえ」だけなので、話をふくらましにくいです。そして、帰ってきた返答には必ずフィードバックします。フィードバックすることで返答した参加者は話を聞いてもらえたと感じ、他の参加者も「何か聞いたら答えてくれる」と感じます。このようにして、参加者が気軽に質問や意見を言える雰囲気を作っていきます。
原稿
ここで問題です。3択問題ですよ。そんなに多くの方はどこで熱中症になるのでしょうか。①外出先(屋外)②道路③自宅。皆さん、よく考えて下さい。いきますよ。①の外出先(屋外)だと思う人は手を挙げて下さい。はい、ありがとうございます。では、②の道路で熱中症になると思う方は手を挙げて下さい。はい、ありがとうございます。③の自宅で熱中症になると思う方は手を挙げて下さい。はい、ありがとうございます。皆さん、回答がばらけましたね。答えは③の自宅です。正確には住居ですね。つまり、家にいて熱中症になってしまう方が1番多いんです。去年は熱中症になった人の約4割が家にいました。
熱中症に影響するのは、日光、湿度、温度、風の4つです。屋外での作業は風があるものの日光、湿度、温度の影響はあるため、熱中症になり易いです。では、家の中ではどうでしょうか。
解説
この健康教育の目標は、参加者が熱中症の予防行動を実践することです。熱中症の予防行動をとるための動機づけでは、「自宅でも熱中症になる」ということを用います。健康教育の中で、伝えたいこと、ポイントとなることはクイズ形式にすると参加者の印象に残りやすいです。「家で熱中症になることはないでしょ」「近所の人は道端で熱中症になったって聞いたから②かな」といったように、どこで熱中症になるのかということについて考えます。この考えるという行動が参加者に印象を残します。
そして、回答の解説として「昨年の熱中症になった人の〇割が自宅でした」といったように、具体的な数字を出します。ここで出す数字は、全国でも良いですが、健康教育をする地域の都道府県や市町村単位の数字が分かるならばより一層、熱中症の危険性が伝わります。
細かな解説は、ポイントを絞って端的に伝える必要があります。参加者が難しいと感じる時間が長いと、理解するのを諦めてしまいます。そうすると、その後の健康教育の内容も理解されにくくなります。極端なことを言えば、参加者が熱中症の予防行動を実践することができれば良いので、細かな原理やメカニズムを理解していなくても問題ありません。
健康教育の原稿を作っていると、どうしても1から10まで順序だてて伝えたくなりますが、必ずしもその必要はないのです。
原稿
ポイントは2つです。「家の中でも熱中症になる」「65歳以上の方は特に熱中症になり易い」ここまでで、何か質問のある方はいらっしゃいます
解説
健康教育の途中で、まとめを入れます。人間の集中力は20分間とも言われているため、話が長くなると集中力が切れて、頭に入りにくくなります。また、初めの方で話したことは忘れていきます。そのため、前半部分のポイントを2つに絞ることで、参加者はその他の内容を忘れることができます。他の内容を忘れても「家で熱中症になる人は多いから気を付けなければいけない」といった印象だけが残ります。
また、40分間の健康教育をすると最初の方で思った疑問は、終わりごろには忘れています。保健師が話している途中で、質問をしにくい方もいるので、途中で質問を受け付けます。
熱中症の予防方法
原稿
朝起きて1杯水を飲む
朝食の時に1杯
10時頃に1杯
昼食で1杯
15時のおやつで1杯
夕食で1杯
お風呂に入る前に1杯
お風呂から出た後に1杯
寝る前に1杯
解説
健康教育をするうえでのポイントの一つは、参加者が自分の生活に当てはめるということです。
自分の生活をイメージし易いように、媒体に時計の絵を使うことも良いでしょう。今回は畳に座布団というスタイルで行っているため適していませんが、机や椅子が参加者それぞれにあるならば自分の生活で水分摂取をするタイミングを書き出してもらうとう方法もあります。
まとめ
今回は、2本立てで高齢者への健康教育についてご紹介しました。
ご紹介したものはあくまで1例です。実際に健康教育を行う場合には参加者の年齢や男女比、健康教育へのモチベーションなどを踏まえて計画する必要があります。
この記事が保健師学生や新任保健師の参考になれば嬉しいです。
質問や感想等ありましたら、お問合せからお願いします。
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