健康教育のポイント⑦練習

保健師の日常

ここまで準備が整ったらあとは練習です。

筆者が健康教育をするうえで、重要視しているものの一つです。

スティーブジョブズのプレゼンテーションは、見る人をワクワクさせ、「次のアップルの発表はまだか」と思わせる素晴らしいものです。そんなスティーブジョブズもプレゼンテーション当日までの間に練習を重ねていました。スライドの替わるタイミング、照明の位置、音響の調整までをも確認したと言います。

スティーブジョブズが練習を重ねることで素晴らしいプレゼンテーションができたならば、保健師も練習をすることで素晴らしい健康教育ができるのではないでしょうか。

今回はそんな健康教育の練習方法についてご紹介します。

シナリオを作る

まず、シナリオを作ります。

  • 導入
  • 糖尿病のリスクを知る
  • 食事
  • 運動
  • 取り組み内容を決める
  • まとめ
  • アンケート記入

糖尿病予防教室を例に挙げるならこんな感じです。

シナリオを作るうえでは、常に目的、目標を意識します。

「何を伝えたらいいか分からない」「どこまで専門的な内容を伝えればいいか分からない」と思った時には、目的を振り返り「対象者にどうなってほしいのか」を考えます。

対象者の体重減少を目標にするなら具体的な方法を紹介する必要がありますし、対象者が糖尿病予防の重要性を理解するという目標にするなら糖尿病罹患者数や透析導入者の体験談を紹介するといった方法もあります。

そのため、目的、目標を考えながらシナリオを作ることが大切です。

シナリオ作りのもう一つのポイントは、導入とまとめです。

導入では自己紹介や参加してくれたことへの感謝を伝えたりします。「今からどこの誰が何を話すのか」が分かると、健康教育の内容も伝わりやすくなります。

まとめでは、健康教育のポイントを伝えます。伝えたいことはたくさんあると思いますが、ポイントは3つに絞ります。4つ以上のポイントは忘れやすいです(筆者経験談)。

ポイントを伝えることで参加者が帰宅後に「今日結局何を聞いたんだっけ」とならずに済みます。

原稿を作る

シナリオができたら原稿を作ります。

「対象理解」で分析した対象者象をイメージしながら、言い回しを考えます。

糖尿病予防教室で食事について伝えようと思った時に、今まで糖尿病について学んだことがない対象者ならば「先に野菜を食べる」「間食を1回減らす」という内容にしますが、以前に糖尿病について学んだことがある対象者ならばカーボカウントについて伝えても良いかもしれません。

食事というテーマで伝えるにしても、対象者に合った内容を考えながら原稿を作ります。

原稿を見ながら練習

原稿ができたら練習です。

最初は時間を測りながら原稿を読みます。原稿を読む段階では予定時間よりも少し短い程度の文量を目安にします。本番では参加者の反応を見ながら、時には質問に答えながら進めるため原稿よりも長い時間がかかるからです。

次は、スライドなどの媒体を用いて本番を想定しながら練習します。この段階ではまだ原稿を見ながら練習します。本番を想定しているので、スライドを切り替えるタイミングや声の大きさ、間の取り方にも意識します。

原稿の要点にマーカーを引く

ある程度本番を想定した練習ができたら、原稿の重要なポイントにマーカーを引きます。

そして、原稿をほとんど見ずに話せるように練習していきます。練習するときは原稿を手元に置き、話すことを忘れたらマーカー部分をチラッと見ます。原稿は一言一句覚えなくてもいいです。多少言い回しが違っても、内容が伝われば問題ありません。言い回しの違いよりも、自然な流れで話せるように練習を繰り返すことが大切です。

マーカー部分のみをメモして練習

最終的には、マーカー部分のみをメモし健康教育を行います。

原稿やメモを見るのではなく、対象者を見ながら行います。基本的には何も見ずに実施し、忘れた時にチラッとメモに視線を移すくらいです。

メモに視線を移す時も「ええと、次は何を話すんだっけ」と滞ることなく、健康教育の流れを止めない形だとベストです。

見てもらう

練習の最終段階では、誰かに見てもらいましょう。

職場の他の保健師に見てもらえるのなら、それも良いでしょう。専門職の視点でアドバイスや感想がもらえると思います。

筆者のおすすめは、家族や友人に見てもらうことです。家族や友人が全員保健師でもない限り、住民の視点で見てもらうことができます。家族や友人が「分かりにくい」と感じたのならば、本番でも「分かりにくい」と思われる可能性があります。

時間に余裕があるならば自分の健康教育をビデオに撮って振り返るのもおすすめです。

無くて七癖と言われるように、どんな人にも癖があります。

頭をかく、鼻を触る、あごを触る、言葉に詰まると「えー、つまり」と言ってしまうなどです。そうした癖は自分では気づきにくいですし、家族や友人などの近くにいる人も今更指摘することは少ないでしょう。そのため、ビデオに撮った自分をみて、気になるところを修正するのも大切です。

まとめ

  • 練習を重ねることで健康教育の質が上がる
  • まずは原稿を見ながら練習
  • 最終的には重要なポイントをメモして実施
  • 本番前に他者に見てもらうことも大切

今回は健康教育の練習の仕方についてご紹介しました。

筆者が健康教育を初めて行う時には、健康教育の書籍の他に、プレゼンテーションの書籍も読みました。健康教育の書籍は非常に数が少ないです。しかし、プレゼンテーションは一般企業で多く行われるため、書籍もたくさん出版されています。

筆者は「スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン(カーマインガロ著,日経BP社)」を特におすすめします。

ただ、気をつけなければいけないのは、健康教育は参加者と相互のやり取りがあるということです。

  • 質問を投げかけ、その反応を見る
  • 参加者の理解度を確かめながら進める
  • グループワークを行う など

このように、参加者と相互のやりとりをしながら、参加者の行動変容を促すという点がプレゼンテーションと異なります。その点を理解し、自分なりの健康教育を見つけていけると、保健師としてステップアップできるのではないかと思います。

今回の内容があなたの健康教育の参考になると嬉しいです。

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