長い準備を終え、とうとう本番です。
しかし、本番で不測の事態に陥ると焦ります。不測の事態を起こさないために、工夫できることがあります。
そんな工夫を幾つかご紹介します。
予定していた参加者が来ない
当日焦ることの1つが、参加者が来ないことです。
20人、30人規模の健康教育で、最初から最後まで講義形式で行うならば1人来なかったところで問題ないでしょう。
しかし、最近では感染対策の観点から5人~6人で健康教育をすることも増えてきています。少人数での健康教育で1人不参加となると進行にも影響してきます。そして、費用対効果も低下します。
「参加者が来ない」という事態に陥らないためには、日にちが近づいた時点で連絡を入れておきます。
募集期間の締め切り日と健康教育本番の日にちが開いている場合には、申し込んだものの忘れてしまったということも考えられます。
そのため、葉書、メール、電話などで、健康教育の1週間から3日くらい前までに1度連絡しておくと良いです。その時点で既に、不参加が分かっている場合は参加者から保健センターへ連絡してくれます。仮に不参加だとしても、事前に分かっていれば進行方法を修正することができます。
また、当日キャンセルの時のために、申込時に電話番号を記載してもらうことも大切です。
スクリーンに映らない
外部講師を招いての健康教育を行う際に起こりやすいトラブルが、スクリーンに映らないことです。
外部講師が行う健康教育はパワーポイントを用いることが多いです。特に色々なところで公演を行っている様な方の場合では、ほぼ100%パワーポイントでしょう。
健康教育当日に講師からUSBでデータを預かり、PCに接続するも、読み込まれないとかなり焦ります。
こうした事態を回避するためには、事前にデータをもらっておくと良いです。
メールでパワーポイントのデータをもらっておき、本番で用いるPC、プロジェクター、スクリーンを用いて実際に最後まで移るか試してみます。
スライドを資料として参加者に配布する場合も、事前に印刷することができます。
特に、使用するPCやプロジェクターが保健センターの備品ではなく、会場に備え付けられている場合にはこれをしておく必要があります。PCの互換性やプロジェクターの接続不良などでうまく映らない可能性もあるからです。
想定していなかった質問が来た
保健師自身で健康教育を行う場合に、想定していなかった質問が出ると焦ります。
専門職の講師として健康教育を行うため、エビデンスの無いことを言うことはできません。
想定していなかった質問が出た場合は、
「正確にお答えできないため、調べて後日お答えします」
でOKです。保健センターへ戻って参考書を調べたり、職場の先輩保健師に聞いて答えを出しましょう。保健センター主催の健康教育でしたら、後日郵送等で回答を送ります。介護予防団体などでの健康教育ならば、団体の代表者を通して回答を伝えることもできます。
筆者は介護予防団体へオーラルフレイルについての健康教育を行った際に、
「私は10年前くらいから水圧で歯の間の汚れを取るものを使っている。これは効果があるのか。」
と質問されたことがあります。筆者は水圧で歯間の汚れを取るものは初耳であったため答えられませんでした。インターネットで検索すると20,000円程する高価なものが出てきました。文献を幾つか見てみるとプラークとなる前の食物残渣は除去できるが、プラークとなった後は除去できないとするものが幾つかありました。健康教育後に介護予防団体の方を通して、回答を伝えていただきました。
日ごろ健康についてのアンテナが高い保健師ですが、住民のヘルスリテラシーも上がっています。また、テレビやインターネットで情報があふれているので、思わぬ質問が出てくることがあります。その場で苦し紛れに答えずに、しっかりと調べた後に根拠をもって答えることが大切です。
質問への準備
前述したように、思いもよらない質問が出てくることがあります。そうした質問をすべて予測し、準備することは不可能です。
しかし、ある程度どんな質問が出るか予測しておくことは必要です。特に、テレビやSNSなどで話題になっていることについては質問が出やすいです。
糖尿病予防教室では、「糖質制限は良いのか」という質問がでることがあります。糖質制限は欧米では注目されており、日本でもよく話題にはなるものの、日本糖尿病学会は長期的な安全性や遵守性のエビデンスが不十分としています。つまり、日本ではあまり推奨されていないということです。
こうした質問を予測し、参加者に分かりやすい回答を用意しておくと健康教育をスムーズに実施できます。また、「この人は糖尿病に詳しい人だ」と参加者に思われ、更に質問が出るかもしれません。
健康教育のテーマは糖尿病、子供の歯磨き、食育、メンタルヘルスなど多岐にわたります。そのテーマに関連した世間のホットな話題について調べておくと良いと思います。
まとめ
- 参加者には事前連絡を入れる
- 講師から事前に資料をもらい、PC、スクリーンは試運転する
- 想定外の質問が出た際には、調べてから答える
- テーマに関する世間のホットな話題は調べておく
今回は健康教育本番で起こるトラブルについてご紹介しました。
保健師を目指す学生や保健師1年目の健康教育で、不測の事態が起こると焦ります。まずは不測の事態が起こらないように準備することが大切です。綿密な準備が本番の安心感を与えてくれます。
不測の事態の対応は、経験や失敗を重ねることでだんだんと身についてきます。学生や新任保健師は教員や先輩保健師と一緒に健康教育を行うことが多いです。自分では対処できないと思った時には、人に頼ることも悪くないと思います。
今回の記事が健康教育前の保健師学生や保健師の参考になれば嬉しいです。
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